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バージョン: v20 R4 BETA

制御フロー

メソッドや関数が単純か複雑かに関係なく、開発者は3つのプログラミング構造のうち、1つ以上を常に使用します。 プログラミング構造は、メソッド内でステートメントが実行される順序を決定する実行フローをコントロールします。 3つのタイプの構造があります:

  • シーケンシャル: シーケンシャル構造は単純な線形構造です。 シーケンスとは、4Dが最初から最後まで次々に実行する一連のステートメントです。 オブジェクトメソッドで頻繁に使用される1行から成るルーチンはもっとも簡単なシーケンシャル構造の例です。 例: [People]lastName:=Uppercase([People]lastName)

  • 分岐: 分岐構造は、条件をテストし、その結果に基づいて異なる流れにメソッドを導きます。 条件は true または false に評価されるブール式です。 If...Else...End if 構文は分岐構造の一例で、処理フローを二つに分岐します。 Case of...Else...End case 構文も分岐構造の一つで、処理フローをもっとたくさん分岐することができます。

  • ループ: メソッドの作成にあたって、何度も同じ処理を繰り返すことがあります。 これに実現するために、4D は以下のループ構造を備えています:

ループを制御する方法には、条件が満たされるまでループする方法と、指定した回数だけループする方法の2通りがあります。 各ループ構造はいずれの方法にも用いることができますが、While ループと Repeat ループは条件が満たされるまで繰り返す場合に、For ループは指定した回数だけループする場合の利用に適切です。 For each...End for each ループは両方を組み合わせることが可能で、オブジェクトやコレクション内でループするために設計されています。

注: 4Dはプログラム構造 (If/While/For/Caes of/Repeat/For each) を512レベルまで入れ子で記述できます。

If...Else...End if

If...Else...End if による制御フロー構造の正式な構文は以下のようになります:

 If(Boolean_Expression)
statement(s)
Else
statement(s)
End if

Else 部分はオプションであり、省略して以下のように記述できます:

 If(Boolean_Expression)
statement(s)
End if

If...Else...End if 構造は、条件 (ブール式) が true か false かによって、処理の選択肢を2つメソッドに与えます。 ブール式が true の場合は、テストのすぐ後のステートメントを実行し、 ブール式が FALSE の場合には、Else 文のすぐ後のステートメントを実行します。 任意の Else が省略されていた場合、End if のすぐ後のステートメント (あれば) へと実行が続行されます。

ブール式は常に全体が評価されるという点に注意してください。 たとえば、以下のような場合:

 If(MethodA & MethodB)
...
End if

この場合、両方のメソッドが true である場合に限り、式は true になります。 しかしながら MethodA が false であっても、4DはMethodB も評価するため、これは時間の無駄になります。 この場合には、以下のような構造を使用するほうが賢明といえます:

 If(MethodA)
If(MethodB)
...
End if
End if

上記の結果はほぼ同じで、MethodB は必要な場合にのみ評価されます。

注記: 三項演算子 を使うことで、条件式を 1行で書くことができ、If...Else 文を置き換えることもできます。

例題

  // ユーザーに名前の入力を求めます
$Find:=Request("名前を入力してください")
If(OK=1)
QUERY([People];[People]LastName=$Find)
Else
ALERT("名前が入力されませんでした")
End if

Tip: 一方の条件に実行ステートメントがない分岐処理を書くこともできます。 下のようなコードはどちらも有効です:

 If(Boolean_Expression)
Else
statement(s)
End if

または:

 If(Boolean_Expression)
statement(s)
Else
End if

Case of...Else...End case

Case of...Else...End case による制御フロー構造の正式な構文は以下のようになります:

 Case of
:(Boolean_Expression)
statement(s)
:(Boolean_Expression)
statement(s)
.



:(Boolean_Expression)
statement(s)
Else
statement(s)
End case

Else 部分はオプションであり、省略して以下のように記述できます:

 Case of
:(Boolean_Expression)
statement(s)
:(Boolean_Expression)
statement(s)
.



:(Boolean_Expression)
statement(s)
End case

If...Else...End if と同様に、Case of...Else...End case 構造も処理の選択肢をメソッドに与えます。 If...Else...End との違いは、Case of...Else...End case 構造が複数のブール式を評価し、その中から最初に true となるステートメントを実行することです。

ブール式の前にはそれぞれコロン (:) を付けます。 コロンとブール式の組み合わせをケースと呼びます。 例えば以下の行はケースです:

:(bValidate=1)

最初に true になったケースに続く (次のケースまでの) ステートメントだけが実行されます。 true になるケースがない場合、どのステートメントも実行されません (Else 文が指定されていない場合) 。

最後のケースの後に Else 文を含むことができます。 すべてのケースが FALSE の場合に、Else 文の後のステートメントが実行されます。

例題

下記の例は数値変数を判定し、対応する数字をアラートボックスに表示します:

 Case of
:(vResult=1) // 数値が1の場合
ALERT("一です。") // 1のアラートボックスを表示します
:(vResult=2) // 数値が2の場合
ALERT("二です。") // 2のアラートボックスを表示します
:(vResult=3) // 数値が3の場合
ALERT("三です。") // 3のアラートボックスを表示します
Else // 数値が1,2,3のいずれでもない場合
ALERT("一、二、三のいずれでもありません。")
End case

比較するために、同じことを If...Else...End if 構文で記述すると以下のようになります。

 If(vResult=1) // 数値が1の場合
ALERT("一です。") // 1のアラートボックスを表示します
Else
If(vResult=2) // 数値が2の場合
ALERT("二です。") // 2のアラートボックスを表示します
Else
If(vResult=3) // 数値が3の場合
ALERT("三です。") // 3のアラートボックスを表示します
Else // 数値が1,2,3のいずれでもない場合
ALERT("一、二、三のいずれでもありません。")
End if
End if
End if

Case of...Else...End case 構造は、最初に true になったケースだけを実行します。 2つ以上のケースが true の場合は、最初に true になったケースのステートメントだけを実行します。

したがって、階層的なテストを実行するときには、階層上で低い位置にある条件がテスト順序で先に記述されていることを確認する必要があります。 以下の例では、ケース2が true の場合、ケース1も必ず true であるため、ケース1は後に位置すべきです。 このままの順序では、ケース2のステートメントはけっして実行されません:

 Case of
:(vResult=1)
...
// ステートメントなど
:((vResult=1) & (vCondition#2)) // このケースが判定されることはありません
...
// ステートメントなど
End case

vResult = 1の判定により他の条件を見る前に分岐するので、第2のケースが判定されることはありません。 コードが正しく実行されるためには次のように書きます:

 Case of
:((vResult=1) & (vCondition#2)) // このケースが先に判定されます
...
// ステートメントなど
:(vResult=1)
...

// ステートメントなど
End case

さらに階層的なテストを実行したい場合、コードも階層化する必要があります。

Tip: 分岐構造において、ケースに続くステートメントの記述は必須ではありません。 下のようなコードはどちらも有効です:

 Case of
:(Boolean_Expression)
:(Boolean_Expression)
...

:(Boolean_Expression)
statement(s)
Else
statement(s)
End case

または:

 Case of
:(Boolean_Expression)
:(Boolean_Expression)
statement(s)
...

:(Boolean_Expression)
statement(s)
Else
End case

または:

 Case of
Else
statement(s)
End case

While...End while

While...End while による制御フロー構造の正式な構文は以下のようになります:

 While(Boolean_Expression)
statement(s)
{break}
{continue}
End while

While...End while ループは、ブール式が true である限り、ループ内のステートメントを実行し続けます。 ループの始めにブール式を評価し、ブール式が FALSE の場合にはループをおこないません。

break および continue ステートメントについては 後述します

一般に、While...End while ループに入る手前で、ブール式で判定する値を初期化しておきます。 通常はブール式が true になるように設定してからループに入ります。

ブール式は、ループ内の要素を使って設定されなければなりません。そうでなければ、ループは永久に続くでしょう。 以下の例では、NeverStop がいつも true であるので、ループは永久に続きます。

 NeverStop:=True
While(NeverStop)
End while

このようにメソッドの実行が制御不能になった場合には、トレース機能を使用し、ループを止めて、問題点を追跡することができます。 メソッドのトレース方法については、エラー処理 の章を見てください。

例題

 CONFIRM("新規レコードを追加しますか?") // ユーザーに確認します
While(OK=1) // 利用者が望む限りループします
ADD RECORD([aTable]) // 新規にレコードを追加します
End while // ループは必ず End while によって終わります

この例では、まずループに入る前に CONFIRM コマンドによりシステム変数 OK がセットされます。 ユーザーがダイアログボックスで OK ボタンをクリックすると、システム変数 OK に1がセットされ、ループを開始します。 それ以外の場合はシステム変数 OK に0が設定され、ループをスキップします。 ループに入ると、ADD RECORD コマンドはループを続けます。これは、ユーザーがレコードを保存した時点で、システム変数 OK に1が設定されるからです。 ユーザーが最後のレコードを取り消した (保存しない) 時点で、システム変数 OK に0がセットされ、ループは終了します。

Repeat...Until

Repeat...Until による制御フロー構造の正式な構文は以下のようになります:

Repeat
statement(s)
{break}
{continue}
Until(Boolean_Expression)

Repeat...Until ループは、While...End while ループと似ていますが、まずループの後でブール式を判定する点が異なります。 つまり、Repeat...Until ループは最低でも1回は必ずループを実行しますが、While...End while ループは最初のブール式が FALSE である場合には、ループを1回も実行しません。

もう一つの While...End while ループとの相違点は、 Repeat...Until はブール式が true になるまでループを続行することです。

break および continue ステートメントについては 後述します

例題

以下の例を、While...End while ループの例と比較してください。 ブール式を、初期化しておく必要がない点に注目してください。システム変数 OK を初期化する CONFIRM コマンドはありません。

 Repeat
ADD RECORD([aTable])
Until(OK=0)

For...End for

For...End for による制御フロー構造の正式な構文は以下のようになります:

For(Counter_Variable;Start_Expression;End_Expression{;Increment_Expression})
statement(s)
{break}
{continue}
End for

For...End for ループは、カウンター変数によりループを制御します:

  • カウンター変数 Counter_Variable は、数値変数 (実数または倍長整数) で、Start_Expression に指定した値に初期化されます。
  • ループを実行するたびに、任意の引数である Increment_Expression の値がカウンター変数に加算されます。 Increment_Expression を指定しない場合、増分値は1になります。
  • カウンターが End_Expression の値を超えた時点で、ループを停止します。

重要: Start_ExpressionEnd_ExpressionIncrement_Expression の値は、ループの始めに一度だけ評価されます。 これらの数値が変数で指定されている場合、ループ内でその変数の値を変更してもループは影響を受けません。

Tip: 特別な目的のために、カウンター変数 Counter_Variable の値を変更することができます。ループ内でカウンター変数を変更すると、ループはその影響を受けます。

  • 通常、Start_ExpressionEnd_Expression より小さい。
  • Start_ExpressionEnd_Expression が等しい場合、1回だけループがおこなわれます。
  • Start_ExpressionEnd_Expression より大きい場合、Increment_Expression に負の値を指定しない限り、ループはおこなわれません。 次に例を示します。

break および continue ステートメントについては 後述します

基本的な使用例

  1. 以下の例は、100回の繰り返しをおこないます:
 For(vCounter;1;100)
// なんらかの処理
End for
  1. 以下の例は、配列 anArray の全要素に対して処理をおこないます:
 For($vlElem;1;Size of array(anArray))
// 各配列要素に対する処理
anArray{$vlElem}:=...
End for
  1. テキスト変数 vtSomeText の文字を一つ一つループ処理します:
 For($vlChar;1;Length(vtSomeText))
// 文字がタブであれば
If(Character code(vtSomeText[[$vlChar]])=Tab)
// なんらかの処理をします
End if
End for
  1. 以下の例は、テーブル [aTable] のカレントセクションの各レコードについて処理をおこないます:
 FIRST RECORD([aTable])
For($vlRecord;1;Records in selection([aTable]))
// 各レコードに対する処理
SEND RECORD([aTable])
//...
// 次レコードへ移動します
NEXT RECORD([aTable])
End for

プロジェクトで作成する大部分の For...End for ループは、上記例題のいずれかの形式になるでしょう。

カウンター変数

カウンター変数の減少

ループに際してカウンター変数を増加させるのではなく、減少させたい場合があります。 その場合、Start_ExpressionEnd_Expression より大きい値を設定し、Increment_Expression に負の数を指定する必要があります。 次に挙げる例題は、前述の例と同じ処理を逆の順序でおこないます:

  1. 以下の例は、100回の繰り返しをおこないます:
 For(vCounter;100;1;-1)
// なんらかの処理
End for
  1. 以下の例は、配列 anArray の全要素に対して処理をおこないます:
 For($vlElem;Size of array(anArray);1;-1)
// 各配列要素に対する処理
anArray{$vlElem}:=...
End for
  1. テキスト変数 vtSomeText の文字を一つ一つループ処理します:
 For($vlChar;Length(vtSomeText);1;-1)
// 文字がタブであれば
If(Character code(vtSomeText[[$vlChar]])=Tab)
// なんらかの処理をします
End if
End for
  1. 以下の例は、テーブル [aTable] のカレントセクションの各レコードについて処理をおこないます:
 FIRST RECORD([aTable])
For($vlRecord;Records in selection([aTable]);1;-1)
// 各レコードに対する処理
SEND RECORD([aTable])
//...
// 前レコードへ移動します
PREVIOUS RECORD([aTable])
End for

1より大きな値によるカウンター変数の増加

必要に応じて、Increment_Expression (正または負の値) に、その絶対値が1より大きな値を指定できます。

  1. 以下の例は、配列 anArray の偶数要素について処理を行います:
 For($vlElem;2;Size of array(anArray);2)
// 偶数要素 #2,#4...#2n に対する処理
anArray{$vlElem}:=...
End for

For...End for ループの最適化

カウンター変数 (インタープロセス、プロセス、ローカル変数) には実数、または整数タイプを使用します。 数多く繰り返されるループの場合、とくにコンパイルモードでは、倍長整数タイプのローカル変数を使用してください。

  1. 次に例を示します:
 var $vlCounter : Integer // 整数型のローカル変数を使用します
For($vlCounter;1;10000)
//Do something
End for

ループ構造の比較

For...End for ループの例をもう一度見てみましょう。 以下の例は、100回の繰り返しをおこないます:

 For(vCounter;1;100)
// なんらかの処理
End for

While...End while ループと Repeat...Until ループで、同じ処理を実行する方法を調べてみましょう。 以下は、同じ処理を実行する While...End while ループです:

 $i:=1 // カウンターの初期化
While($i<=100) // 100回のループ
// なんらかの処理
$i:=$i+1 // カウンターの増分が必要
End while

同じことを Repeat...Until ループで記述すると以下のようになります:

 $i:=1 // カウンターの初期化
Repeat
// なんらかの処理
$i:=$i+1 // カウンターの増分が必要
Until($i=100) // 100回のループ
tip

For...End for ループは、While...End whileRepeat...Until ループよりも高速です。これは 4D が内部的にカウンター変数のテストおよび増加をおこなうからです。 したがって、可能な限り For...End for ループの使用が推奨されます。

For...End for の入れ子構造

制御構造は、必要に応じて入れ子にする (ネストする) ことができます。 For...End for ループも同じです。 誤りを避けるため、各ループ構造ごとに別のカウンター変数を使用してください。

次に例を示します:

  1. 以下の例は二次元配列の全要素への処理です:
 For($vlElem;1;Size of array(anArray))
//...
// 各行に対する処理
//...
For($vlSubElem;1;Size of array(anArray{$vlElem}))
// 各要素に対する処理
anArray{$vlElem}{$vlSubElem}:=...
End for
End for
  1. 以下の例は、データベースのすべての日付フィールドに対するポインターの配列を作成します:
 ARRAY POINTER($apDateFields;0)
$vlElem:=0
For($vlTable;1;Get last table number)
If(Is table number valid($vlTable))
For($vlField;1;Get last field number($vlTable))
If(Is field number valid($vlTable;$vlField))
$vpField:=Field($vlTable;$vlField)
If(Type($vpField->)=Is date)
$vlElem:=$vlElem+1
INSERT IN ARRAY($apDateFields;$vlElem)
$apDateFields{$vlElem}:=$vpField
End if
End if
End for
End if
End for

For each...End for each

For each...End for each による制御フロー構造の正式な構文は以下のようになります:

 For each(Current_Item;Expression{;begin{;end}}){Until|While}(Boolean_Expression)}
statement(s)
{break}
{continue}
End for each

For each...End for each 構造は、Expression に含まれるすべてのCurrent_item に対して処理を繰り返します。 Current_item の型は Expression の型に依存します。 For each...End for each ループは3種類の Expression を対象に反復処理をおこなうことができます:

  • コレクション: コレクションの各要素をループします
  • エンティティセレクション: 各エンティティをループします
  • オブジェクト: 各オブジェクトプロパティをループします

以下の表は、For each...End for each の3つのタイプを比較したものです:

コレクション内のループエンティティセレクション内のループオブジェクト内のループ
Current_Item の型コレクション要素と同じ型の変数エンティティテキスト変数
Expression の型(同じ型の要素を持つ) コレクションエンティティセレクションオブジェクト
ループ数 (デフォルト)コレクションの要素数セレクション内のエンティティ数オブジェクトのプロパティ数
begin / end パラメーターをサポート×
  • ループの数は開始時に評価され、処理中に変化することはありません。 ループ中に項目を追加・削除することは、繰り返しの不足・重複を引き起こすことがあるため、一般的には推奨されません。
  • デフォルトでは、内部の statement(s) 部の処理は、Expression の各項目に対して実行されます。 しかしながら、ループの先頭 (While) あるいはループの終わり (Until) で条件をテストすることで、ループを抜け出すことは可能です。
  • 任意の begin および end パラメーターを指定することで、コレクションおよびエンティティセレクションに対してループの範囲を定義することができます。
  • For each...End for each ループは 共有コレクション共有オブジェクト に対して使用することもできます。 コレクションの要素またはオブジェクトのプロパティを変更する場合は、Use...End use 構文も追加で必要です。 Use...End use 構文の使い方は、つぎのように状況に応じて異なります:
    • 整合性のため要素やプロパティを一括で処理しなくてはならない場合には、ループに入る前 (外側) に使います。
    • 要素やプロパティを個々に変更して差し支えない場合は、ループの中で使います。

break および continue ステートメントについては 後述します

コレクション内のループ

For each...End for eachCollection 型の Expression に対して使用された場合、Current_Item はコレクション要素と同じ型の変数です。 デフォルトでは、ループの回数はコレクションの要素数に基づいています。

コレクションの要素はすべて同じ型でなくてはなりません。そうでない場合には、Current_Item 変数に別の型の値が代入されたときにエラーが生成されます。

各ループの繰り返しにおいて、Current_Item 変数には、合致するコレクションの要素が自動的に代入されます。 このとき、以下の点に注意する必要があります:

  • Current_Item 変数がオブジェクト型、あるいはコレクション型であった場合 (つまり Expression がオブジェクトのコレクション、あるいはコレクションのコレクションであった場合)、この変数を変更するとコレクションの対応する要素も自動的に変更されます (オブジェクトとコレクションは同じ参照を共有しているからです)。 変数がスカラー型である場合には、変数のみが変更されます。
  • Current_Item 変数は、コレクション要素の型と合致していなくてはなりません。 コレクション要素のどれか一つでも、変数と異なる型のものがあった場合、エラーが生成され、ループは停止します。
  • コレクションが Null 値の要素を格納していたとき、Current_Item 変数の型が Null 値をサポートしない型 (倍長整数変数など) であった場合にはエラーが生成されます。

例題

数値のコレクションを対象に、統計情報を計算します:

 var $nums : Collection
$nums:=New collection(10;5001;6665;33;1;42;7850)
var $item;$vEven;$vOdd;$vUnder;$vOver : Integer
For each($item;$nums)
If($item%2=0)
$vEven:=$vEven+1
Else
$vOdd:=$vOdd+1
End if
Case of
:($item<5000)
$vUnder:=$vUnder+1
:($item>6000)
$vOver:=$vOver+1
End case
End for each
//$vEven=3, $vOdd=4
//$vUnder=4,$vOver=2

エンティティセレクション内のループ

For each...End for eachEntity selection 型の Expression に対して使用された場合、Current_Item は現在処理中のエンティティです。

ループの回数はエンティティセレクション内のエンティティの数に基づきます。 各ループの繰り返しにおいて、Current_Item には、処理の対象であるエンティティセレクション内のエンティティが自動的に代入されます。

注: エンティティセレクション内のエンティティが、途中で他のプロセスによって削除された場合、そのエンティティはループにおいて自動的にスキップされます。

カレントエンティティに対して適用された変更は、entity.save() で明示的に保存する必要があることに注意してください。

例題

Employees データクラスの中から、英国の従業員の給与を引き上げます:

 var emp : Object
For each(emp;ds.Employees.query("country='UK'"))
emp.salary:=emp.salary*1,03
emp.save()
End for each

オブジェクト内のループ

For each...End for each が Object 型の Expression に対して使用された場合、Current_Item は現在処理中のプロパティ名が自動代入されたテキスト変数です。

オブジェクトのプロパティは作成順に処理されていきます。 ループ中、プロパティをオブジェクトに追加/削除することが可能ですが、その場合でも残りのループ回数は、オブジェクトの元のプロパティ数に基づいているため、変化しません。

例題

下のオブジェクトに格納されている名前に関したプロパティの値をすべて大文字に変えます:

{
"firstname": "gregory",
"lastname": "badikora",
"age": 20
}

以下のように書くことができます:

 For each($property;$vObject)
If(Value type($vObject[$property])=Is text)
$vObject[$property]:=Uppercase($vObject[$property])
End if
End for each
{
"firstname": "GREGORY",
"lastname": "BADIKORA",
"age": 20
}

begin / end パラメーター

任意の begin と end パラメーターを指定することで、繰り返しの範囲を定義することができます。

注: beginend パラメーターは、コレクションおよびエンティティセレクション型に対するループにおいてのみ使用することができます (オブジェクト型のときは無視されます)。

  • begin には、Expression においてループを開始したい要素位置を渡します (このとき begin の値が指す要素はループに含まれます)。
  • end には、Expression においてループを終了する要素位置を渡します (このとき end の値が指す要素はループに含まれません)。

end が省略されている、あるいは endExpression の要素数より大きい場合、begin 引数の位置から最後の要素まで (含まれる) をループします。 beginend が正の値の場合、それらは Expression 内の要素の実際の位置を表します。 begin 引数が負の値の場合、それは begin:=begin+Expression のサイズ として再計算されます (つまり、Expression の終端からのオフセットであるとみなされます)。 再計算された値も負の値だった場合、begin は0に設定されます。 注: begin が負の値だったとしても、繰り返しそのものは標準の順番で実行されます。 end が負の値だった場合、それは end:=end+Expression のサイズ として再計算されます。

例:

  • コレクションには 10の要素が格納されています (ナンバリングは #0から#9)
  • begin=-4 -> begin=-4+10=6 -> ループは6番目の要素 (#5) から開始されます
  • end=-2 -> end=-2+10=8 -> 繰り返しは8番目の要素 (#7) の前に終了します、つまり7番目 (#6) の要素の処理が最後のループとなります。

例題

 var $col;$col2 : Collection
$col:=New collection("a";"b";"c";"d";"e")
$col2:=New collection(1;2;3)
var $item : Text
For each($item;$col;0;3)
$col2.push($item)
End for each
//$col2=[1,2,3,"a","b","c"]
For each($item;$col;-2;-1)
$col2.push($item)
End for each
//$col2=[1,2,3,"a","b","c","d"]

Until と While 条件

For each...End for each の実行は、Until あるいは While 条件を追加することでコントロールすることができます。 Until(condition) 条件がループに組み込まれた場合、condition の式が true に評価されるとループは停止します。While(condition) 条件の場合は逆に、condition の式が false になるとループが停止します。

使用する条件は状況に応じて選べます:

  • Until 条件は各ループの終わりにテストされます。そのため、Expression が空あるいは null でないかぎり、ループは少なくとも1回は実行されます。
  • While 条件は各ループの始めにテストされます。そのため、評価の結果次第では、ループは一度も実行されないこともありえます。

例題

 $colNum:=New collection(1;2;3;4;5;6;7;8;9;10)

$total:=0
For each($num;$colNum)While($total<30) // 最初にテストされます
$total:=$total+$num
End for each
ALERT(String($total)) //$total = 36 (1+2+3+4+5+6+7+8)

$total:=1000
For each($num;$colNum)Until($total>30) // 最後にテストされます
$total:=$total+$num
End for each
ALERT(String($total)) //$total = 1001 (1000+1)

break と continue

上記のループ構造はすべて、break文および continue文をサポートしています。 これらの文は、ループを完全に終了させたり、現在の繰り返しだけを終了させたりすることで、ループをよりコントロールすることができます。

break

break文は、その文が含まれるループを終了させます。 プログラムの制御は、ループ直後のステートメントに移ります。

入れ子になったループ (ループ内に別のループがある) の中に break文がある場合、break文は最も内側のループを終了させます。

例題

For (vCounter;1;100)
If ($tab{vCounter}="") // 条件が true になった場合
break // forループを終了させます
End if
End for

continue

continue文は、ループにおいて現在実行中の繰り返しだけを終了させ、次の繰り返しよりループの実行を継続させます。

var $text : Text
For ($i; 0; 9)
If ($i=3)
continue // 次の繰り返しに移行します
End if
$text:=$text+String($i)
End for
// $text="012456789"

return {expression}

履歴
バージョン内容
v19 R4追加

return文はどこからでも呼び出すことができます。 関数やメソッドの中で return 文が使われると、その関数やメソッドの実行が中断されます。 残りのコードは実行されず、呼び出し元に制御が返されます。

return 文を使用して、呼び出し元に戻り値 を返すことができます。

例題

var $message : Text
var $i : Integer

While (True) // 無限ループ
$i:=$i+1
$message+=String($i)+"A\r" // 5まで実行されます
logConsole($message)
If ($i=5)
return // ループを終了させます
End if
$message+=String($i)+"B\r" // 4まで実行されます
logConsole($message)
End while
$message+=String($i)+"C\r" // 実行されることはありません
logConsole($message)

// 1A
// 1B
// 2A
// 2B
// 3A
// 3B
// 4A
// 4B
// 5A